仏教の儀式や故人様の供養などに使用される道具を仏具といいます。
その仏具の中から今回は「過去帳(かこちょう)」について取り上げます。
過去帳は先祖代々(故人)の名前や没年月日が記されています。
ここでは、過去帳が持つ意味や用途についてご紹介します。
これから「過去帳」が必要な方、「過去帳」について知りたい方に読んでいただきたい記事です。
1.過去帳とは
2.過去帳の選び方
3.過去帳の歴史
4.過去帳の記入をお寺に依頼する
5.過去帳と位牌の違い
6.見台の種類と過去帳の置き場所
7.浄土真宗はなぜ位牌がないのか?
8.過去帳はお寺さまが書く?
1.過去帳とは
過去帳とは、その家の故人の氏名(俗名)、戒名(法号・法名)、没年月日、死亡年齢(享年)、続柄などを書き記した各家庭に伝わる帳面型の仏具です。
先祖代々の情報が記載されている過去帳は系譜の役割も果たしています。
浄土真宗以外の宗派はお仏壇に位牌をお祀りしますが、浄土真宗は位牌ではなく見台へ乗せた過去帳を月命日などにお仏壇へ飾ります。
普段はお仏壇の引き出しにしまっておくもので、素材は一般的に帳面の部分が和紙で出来おり、表紙や裏表紙は布や木で装飾が施されています。
2.過去帳の選び方
過去帳を使用する場合、どの宗派も過去帳の素材やサイズについて細かい決まりはありません。
いずれのタイプも過去帳と合わせて「見台」と呼ばれる台座を購入することになりますが、見台についても同様で細かい決まりはありません。
形は縦長の長方形で、一般的に売れているサイズは4寸(縦12cm)~5寸(縦15cm)の過去帳が多く見られます。
一般的な過去帳は表紙が布地で、装飾が施されており比較的安価で見栄えが良く華やかな印象を与えます。
デメリットは、長年使用していると糸がほつれてしまうことがあるため、何十年もの長期保管には不向きという点です。
一方、表紙が木材の過去帳は、お仏壇の色と合わせやすく、重厚感があり汚れても比較的、掃除がしやすく長期間保管しやすいという特徴があります。
デメリットは、購入価格が過去帳も見台も1万円を超えるものが多く、布地の過去帳を購入するよりお金が掛かるという点です。
帳面部分の中紙はほとんどの過去帳が長期保管に向いている和紙を使用しており、見台も長期的に使用できるよう木材が使用されています。
過去帳を選ぶ際は、表紙の材料それぞれの特徴を理解した上で、ご自宅のお仏壇や祀る(飾る)場所に合った柄や色、サイズを選び、見台は選んだ過去帳に合ったものを購入しましょう。
3.過去帳の歴史
仏具であり系譜である過去帳にはどのような歴史があるのでしょうか。
逸話や史実から過去帳が確認できるのは鎌倉時代以降で、この頃は寺院でのみ使用していたようです。
江戸時代になり、幕府からキリスト教が禁止され、庶民は寺の檀家になることが義務付けられる「檀家制度」が始まりました。
これにより、寺院用として使われていた過去帳が、庶民の家にも過去帳(檀家用)を置くようになり、これが今の過去帳のルーツだと言われています。
この時代の檀家用の過去帳は、現在の戸籍のような役割を果たしていたようです。
そのため、今は「個人情報保護」の観点から寺院で保管する過去帳は非公開とする寺院が多くなっているようです。
4.過去帳の記入をお寺に依頼する
過去帳への記入は、菩提寺に依頼することができます。
通常、過去帳への記入を住職が行う場合、四十九日など何らかの法要までに行われることが多いようです。
そのため依頼する場合は、戒名を授かった時など早めにお願いしておいたほうがいいでしょう。
過去帳記入のお布施は、『法要のお布施の中に含まれる』と考えるのが一般的です。
ちなみに四十九日法要のお布施の相場は過去帳記入代を含めて3~5万円程度だと考えられています。
このほかに、過去帳の内容を書き写すだけの場合は5,000円~1万円程度のお布施をすることがあります。
お布施の金額は、地域やお寺によって決まっていることもあるので、金額が不明な場合は菩提寺に目安を教えていただいても問題ありません。
5.過去帳と位牌の違い
位牌、過去帳のどちらも先祖の記録を残したり故人を追悼するために生まれたものですが、両者には大きな違いがあります。
位牌は故人の魂を宿し、お仏壇にお祀りして、ご本尊と一緒に拝む対象となる仏具に対して、過去帳は先祖の記録簿(系譜)の意味合いが強く月命日以外はお仏壇の引き出しに保管しておきます。
意味合いはちがいますが、どちらも大切な仏具であるため、ご家庭で守り伝えていきます。
6.見台の種類と過去帳の置き場所
過去帳と合わせて購入する「見台」と呼ばれる台座には足が付いているものと足がないものとあります。
大きな仏壇であれば足が付いているものを選び、モダンな仏壇や上置きなどの小さな仏壇は足がないものを選びましょう。
サイズについては、過去帳と見台を同じサイズにすると過去帳が小さく見えてしまいますので、見台は過去帳より一回り小さいものを選ぶようにしましょう。
例えば過去帳を4寸にした場合、見台は3.5寸を購入するとバランスがよくなります。
材質はプラスチック製もあるようですが、木材のものがほとんどで過去帳に合わせて購入するとよいでしょう。
購入後は見台の上に過去帳を置き、お仏壇の向かって右側に置きます。
仏像が隠れないようご本尊よりも下段に置き、故人の月命日にはそのページを開いて飾ります。
7.浄土真宗はなぜ位牌がないのか?
浄土真宗以外の他宗派では、亡くなった方や先祖の魂が宿った依代(よりしろ)である位牌をお仏壇にお祀りし供養します。
しかし、浄土真宗では基本的に位牌は置かずに過去帳や法名軸を用います。
これは浄土真宗の教えに基づいており、亡くなった方の魂は念仏(南無阿弥陀仏)を唱えると極楽浄土で仏になると考えられています。
そのため、魂が現世にとどまることはないためお仏壇に位牌をお祀りする必要がないとされているのです。
8.過去帳はお寺さまが書く?
過去帳は誰が書くという決まりはないため、故人さまと最も縁のある方や、過去帳を購入された方が記入しても構いません。
しかし、実際は書き方や記載内容を把握されている菩提寺の住職に依頼して書いていただくのが一般的です。
和紙に墨で書いた文字は何十年も消えずに残りますので、過去帳の記入を菩提寺へ依頼せず、身内が書く場合、できれば筆を使って墨で書くようにしましょう。
故人さまの没年月日、戒名、俗名(氏名)、享年(行年)、続柄を記載しておき、家の系譜を子孫のために残していきましょう。